本当にしあわせな服の選び方。
なかなか痛い所を突かれた。
久々に、良い意味で心に棘が刺さり、
その傷を味わうことになる映画だった。
その映画の名前は「ザ・トゥルーコスト」というドキュメンタリー。
友人が「ぜひ」とDVDを貸してくれた。
オーガニックや地球環境には意識が高いつもりだったが、
「着るもの」に関してはかなり意識が低かった。
だけどこの映画で淡々と語られる事実は、
ただ単に「オーガニックコットンの服は身体に害がなくて
優しい♪」なんていう単純なものではなかった。
巨大企業の裏側で、
低賃金で朝から晩まで働くバングラデシュの女性。
倒壊寸前のビルで働かされ、「安全性よりも利益を」と、
ついにはその瓦礫の下で犠牲になった人々。
皮を加工する工場の汚染水で、重い皮膚病を患い、
悲惨な見た目になってしまった女性や、障害児。
「よくここまで、モザイクなしで…」と息を呑むほどの惨状。
物語は、きらびやかなファッションショーや週末バーゲンに狂う人々と、
バングラデシュやインドの悲惨な現状や捨てられた服のゴミ山を、
まるで世界の光と影のように対照的に描き出す。
最も環境を蝕んでいる産業は、石油産業に次いで、
ファッション産業が第二位だそう。
世界の農薬使用料ダントツNo.1は、
まさかの綿花だそうだ。
トマトやキュウリの農薬は気にしていたけど…。
映画の中に、とある激安スーツの、アメリカで放映されたCM映像があった。
「三枚で一枚ぶんの値段!スーツが布巾よりも安い!」
というナレーションと共に、
テーブルにこぼれたジュースを、
なんとスーツで無造作に拭き、
ポイッとゴミ箱に捨てる映像が流れる。
そこに「HAHAHA…」という外人の笑う効果音付きだ。
いやいや、笑うとこじゃないだろう。
背筋がすっと寒くなる。
小さな子どもを預けて、
工場で懸命に服を縫い上げるバングラデシュの女性がいることなんて、
ただ服を値段だけ見て買う私たちには想像がつかない。
自分のオシャレを我慢しようとか、節約しようとか、
「昔に戻ろう」という話ではない。
みんながハッピーになる「創造的解決」が
もう見えてこないといけない時代だ。
まずは自らの洋服を見直してみることにした。
すると、大きく二種類に分かれた。
ひとつは「可愛い」「流行りだし」「安いし」「店員さんに薦められたし」などあらゆる理由で購入した服たち、
もうひとつは、私の母の親友で、上質な物しか周りに置かない超センスの良いセレブがいて、彼女からいただいたお古。
この数年、季節ごとに、断捨離という名の厳しい総選挙を行っても神7に堂々と君臨し続けるのが、
このセレブからのお古である「上質の服」たちなのである。
自分がときめいて買ったはずの洋服すら、
一部を除きあっという間に圏外になり、
ゴミ箱行きになる。
上質な服には流行り廃れがなく、
手触りも格段に優しく気持ちいい上に、
ヨレや傷みも少ない。
やはり本当のお金持ちは、上質な物を長く大切に使い、
無駄遣いしないのだ、と文字通り「肌で」体感する。
「安物買いの銭失い」とはまさに、
近年の洋服事情にピッタリな諺なのかもしれない。
いきなり上質な服を買うのは難しくても、
本当にお気に入りの服を大切に着ることは
今日からでも出来る。
また、公正に取引されたフェアトレードの商品(ピープルツリーというブランド)や
無印良品などのオーガニックコットンを選ぶという選択肢も
今日からできる。
「何か新しい物を買えば自分は幸せになれる」
と広告は強烈に言うが、果たしてそうなのか?と、
ドキュメンタリーの中でもジャーナリストが疑問を挙げていた。
私たちは、自分の幸せを我慢したり、
恵まれない人たちに同情したりするのではなくて、
本当に自分は何を求めてるのかを探求して、
本当の意味で自分を満たすことが、
いよいよ求められている時代にきていると思う。
本当に自分が満たされれば、
おのずと周りも幸せになるはずだから。
服だけでなく、「ひとの幸せとは?」という原始的な問いまで考えさせられてしまった映画だった。